「Sydney大学留学記」
5系 稲垣・逆井研究室 第八期生 岩下 哲雄
<留学について>
科学技術庁から募集がある日豪科学技術研究員交流派遣制度に合格し、1999年11月1日より一年間、オーストラリア シドニー大学歯学部へ留学いたしました。ホストは、M.V. Swain教授、紹介していただいたのは、出身研究室の逆井基次教授です。Swain教授は、元々Commonwealth Science and Industrial Research Organization (CSRIO)の研究者でメルボルン時代は、ジルコニア系セラミックスの調製とその破壊力学、シドニーのNational Measurement Laboratoryでは微小硬度計(Nano‐indentation)の設計および開発を、そしてSydney大学では歯科をはじめとする生体材料やそれらの材料の接着を破壊力学の観点から評価することを主に研究されています。牛の歯の靭性試験、人間の歯の微小硬度測定などを見る機会を得ました。とても、研究の守備範囲の広い先生です。

一方、私のSydney大学での研究テーマは、炭素材料、特にガラス状炭素の変形挙動をSwain教授が開発されたNano-indentationマシンで評価することでした。この研究に対して稲垣・逆井研究室で同期だった太田直人君(東洋炭素鰍ノ勤務)からガラス状炭素試料の提供を受けられたことは、たいへんありがたかったです。
<シドニーでの生活>
私がシドニーへ留学する直前まで、工業技術院(現:産業技術総合研究所)の友人である高橋 淳さん(現:東京大学工学部助教授)がSydney大学工学部 複合材料の権威Mai教授のところへ留学されておられ、しかも彼と家族構成がまったく同じだったので、何のためらいも無く彼が借りていたアパート・車そして、乳児のためのグッズを引き継ぐことができたのは幸運でした。
アパートは築8年、8階建ての分譲マンションの4階、100m2ありました。地下にセキュリティキー付の駐車場、共同のプール付です。交通の便は、最寄の駅まで徒歩15分、Sydneyの中心部 Cityと呼ばれる場所まで電車(Cityrail)で20分、Sydney大学まではおよそ40分という距離です。私は、毎日ハーバーブリッジを渡り、オペラハウスを眺めて自宅と大学を往復しました。アパートはこれだけの好物件ですから、家賃は日本円でおよそ10万円/月しました。オリンピックという行事があったためか、少々バブル気味で、不動産は毎年10%程度値上がりしているようです。
食料品は日本比べて各段に安いです。牛肉は安いのですが、硬くてまずい。鶏肉が比較的高価で日本と同じくらいの値段ですが、味は保証できます。
味噌・しょうゆ・梅干などの日本食は、日本人街があり手に入りますが、中国人・韓国人街へ行く方が安く、しかも品数も多いので、少々遠くても車・電車でこちらへ行く場合が多かったです。
アパートから歩いてすぐのところのCrows Nest(カラスの巣)という街の商店街には日本食レストランが11件もあり、重宝しました。特に、魚料理はたいへん美味しく日本では何万円もしそうな食材(ウニ、エビなど)を安く食べることができました。すべての日本食レストランが日本人の経営という訳ではありません。韓国人らしき夫婦が経営していた寿司バーのいなり寿司には、なんと"わさび"がたっぷりはいっていました。
長男は地元の幼稚園(pre-school)へ通わせました。オーストラリアの新学期は夏休みが終了する2月からスタートです。キリスト教会に隣接したこじんまりとした幼稚園で一学年の定員25名、スタッフ(いわゆる幼稚園の先生)が4人で子供達の面倒をみます。実にゆったりとしたものです。長男の英語を覚える速さには驚かされました。耳から覚えてくるので「R」と「L」の発音の区別ができていたのは、英会話教師の嫁さんも驚いていました。ただし、「A」の発音が完全にAussie訛で赤ちゃんのことを「バイビー」と発音していました。
<南半球のラグビー>
シドニーへ到着してすぐに、Rugby World Cup1999 の決勝戦があり、Australia National team のWallabiesが2度目の優勝で幕をとじました。Wallabiesが帰国してから優勝パレードがあったり、本当に良い時期に留学できたものだと思いました。
オーストラリアのラグビーは、日本でおなじみの15人制のユニオン・ラグビーより、ずっと前からプロ化されていた13人制のリーグ・ラグビーの方が盛んです。NRLというオーストラリア人曰く、「世界最強のリーグ」の試合はすごい迫力です。3月から9月までほぼ毎週ゲームがあります。
一方、ユニオン・ラグビーは、南半球3カ国(オーストラリア、ニュー・ジーランド、南アフリカ共和国)のクラブチーム選手権「SUPER 12」が2月から7月まで行われ、それが終わった7・8月には、南半球3カ国のNational teamの対抗戦 Try Nationsがあり、ラグビーファンをくぎ付けにさせます。
本当にこの国はラグビーが好きなのでしょう。芝生の公園やビーチで、男の子達はラグビーボールを持って遊ぶ姿を目にします。南半球の国においてラグビーが強いのも納得できますよ。
私もシドニー在住の日本人リーグ・ラグビーチームの練習に参加して、南半球のラグビー文化に少しは触れられたようです。

<この場を借りて、近況を>
私の指導教官であった稲垣道夫先生は、平成居11年3月 北海道大学を定年退官され、同年4月からは尾張旭市の自宅へ戻られ、愛知工業大学 応用化学科教授として活躍されておられます。
私は、稲垣先生、そして、同じ研究室の4年上の 豊田昌宏先輩(福井高専助教授)らとNEDO提案公募事業での共同研究を平成10年度から平成12年度まで3年間実施しておりました。
私の所属していた 旧通商産業省 工業技術院は、平成13年度4月より、経済産業省傘下の独立行政法人 産業技術総合研究所となり、私の勤務先は、 旧大阪工業技術研究所(現:産業技術総合研究所 関西センター)から産業技術総合研究所 つくばセンター西(旧資源環境技術総合研究所)へ異動となります(した)。
(同窓会報 No.19より)
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